龍脳の香りの由来

お香の原料の龍脳、樟脳よりも高級感があり、
いまでは天然では幻といわれるぐらいに
貴重なものとなっております。墨作りやアロマでも
活用されており、神秘に迫ってみたいと思います。

■墨の香りの龍脳■

奈良といえば、奈良墨。
奈良では伝統的な墨作りが、今も手作業でおこなわれています。

墨は元々、中国から伝わり、推古天皇の時代には国内で作られていたという記録があります。
奈良時代に製造されていた墨は松煙墨(しょうえんぼく)で、
その後、鎌倉時代に油煙墨(ゆえんぼく)の製造が始まりました。

江戸時代に入ると各地で製造されるようになりましたが、
実績のある奈良に優秀な職人が集まったため、1300年にわたって奈良の伝統産業となったのです。

奈良では、墨を作っている会社が7件、墨職人(墨工)はたったの10人!
たった10人の墨職人(墨工)で日本の墨の90%を作っているそうです。
墨を作る時期は10月~3月までの約半年間。
その間に墨職人(墨工)は、1日200~400個もの固形墨を作るそうです。

墨の材料はこちら!
・ニカワ
・松煙(しょうえん)
・油煙(ゆえん)
・龍脳(りゅうのう)→こちらがお香の原料龍脳です。
・香料

●松煙(しょうえん)は、赤松からしか取れない貴重な墨。
赤松というのは、周りに松茸が生える松です。日本の松茸は香りが良く高価ですよね。
そんな松茸が生えるところにしかない赤松を使って作る松煙(しょうえん)は、墨にするともちろん値が張ります。
赤松

●油煙(ゆえん)は、植物の油から取る墨。
菜種油、胡麻油、椿油、桐油など。
菜種油を用いて作られた墨が最上だそうです。
※ちなみに墨汁は石油などの鉱物から作っています。

●ニカワは、動物の骨・皮・腱などを水で煮た液を乾かし、固めた物質。ゼラチンです。
固形の状態では全く匂いはないです。

●ススの作り方
松煙(しょうえん)や油煙(ゆえん)を取るには、材料を燃やして、蓋についたススを採取します。
燃やす器と蓋の距離が長ければ長いほど取れるススの量は少なくなるのですが、上質のススが取れるしそうです。そのススで作られた墨は上質でやはり高価な墨になるんだそう。
油煙(ゆえん)の方が色が濃く、松煙(しょうえん)は少しグレーがかっています。

●龍脳(りゅうのう)は香料です。
墨を作る際にススをニカワで固めるのですが、ニカワの匂いが強いため、龍脳で香りを加えて臭いを消しています。龍脳は、ナフタリンの匂いがします。

香料は、墨職人が龍脳にムスクなどを混ぜてオリジナルで作っているものです。
錦光園の長野墨延さんもオリジナルで香りを作っています。
自分が作った墨だ!と分かるのは、磨ったときの香りで分かるそうです。

●墨づくりの工程です。
①墨の原料(油煙・ニカワ・香料)を練り合わせます。
②墨の重さを計ります。
③計った墨をシワがなくなるまで丸めます。
④丸めた墨を棒状に伸ばします。
⑤棒状に伸ばした墨を墨の型に入れます。
⑥墨の型に入れたら、機械で圧力をかけます。
⑦圧力をかけて型から外す

この墨をしっかり乾かすと縮みます。
型の8割くらいの大きさになります。

●感想
箱ごとタンスの中などに入れて最低3ヶ月はそのままで乾燥させます。
3カ月は絶対に開けてはいけません!!


墨は古いほど良いと言われています。
人の成長と同じように幼年、少年、青年、壮年、老年期と成長し変化していくんだそう。
この成長過程も墨の大小、厚み、保管場所によって違いが生じるそうです。

こちらのサイトを参考にさせていただきました。
http://sachigra.com/gallery/calligraphic/6214/

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アロマとしての龍脳

エッセンシャルオイル(精油)

ボルネオール BORNEOL
学名: Dryobalanops aromatica
科名: フタバガキ科
種類: 高木
抽出部分: 木部
抽出方法: 水蒸気蒸留法


【 原産地・分布・生産地域 】
原産はボルネオ、スマトラになります。

【 芳香の系統・特色・表現、精油の色 】  
色・形状はカンホールの含有量によって変化します。
白っぽい水のようなものから黒色で粘質のものまであります。
サッサフラスに似た、カンファーのような香りがします。

ノート(香りの種類): ベースノート
香りの度合い: 強

【 主要成分 】
ピネン、カンフェン、ジペンテン、d-ボルネオール、テルピネオール、
レジン、セスキテルペン類などです。


ペルシャ、インド、中国などでは、万能薬として珍重されてきました。

事実ペルシャの国王クロスロエスⅡ世は、龍脳をとても珍重しており、
バビロン王宮に宝物として秘蔵していたほどです。
(ちなみに発掘された時、なんと有機物質が完全な状態だったそう!)

中国ではミイラ作り、葬送にも用いられました。
また日本や中国では、ニスやインクを作るのにも用いられます。

マルコポーロやカモンイスに“病の慰め”とも呼ばれました。
ペストや伝染病、その他胃や腸の症状にも処方されました。

ボルネオールは芳香剤、そして殺虫剤としても広く使われてきた植物です。
また香りが虫除けとなるため、建物の建築材としても重用されました。